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AIが接客する時代、会社の「こだわり」が選ばれる理由になる。

スマートフォンで飲食店の候補を比べ、自分に合う店を選ぶ

「この条件なら、どのお店がいい?」。もしお客様が、お店のサイトを開く前にAIへこう聞いていたら。そこで、価格や場所だけでなく、そのお店ならではの良さまで伝わるでしょうか。これは、飲食店に限らず、これからの企業の情報発信を考えるうえで大切な問いです。

僕は今後2〜3年で、AIがお客様の比較や相談を手伝う場面が、さらに身近になると考えています。そのとき必要なのは、自社の専門性やこだわりを、お客様が判断できる情報に変えておくことです。身近なレストランを例に、これからのWebで何を準備しておくとよいのかを考えてみます。

お客様は、問い合わせる前にAIへ相談する

例えば、「週末に家族で食事をしたい。小さな子どもがいて、車で行けて、ゆっくり話せるお店がいい」とAIへ相談する。人数や予算、希望する時間をやりとりするうちに、個室が必要なのか、子ども向けのメニューがあるとよいのか、駅から近いことより駐車場が大切なのかが整理されていく。お店の名前を知らなくても、過ごしたい時間から候補を探せます。

実際、博報堂が2026年6月に公表した調査では、買い物で生成AIを使う1,276人のうち、AIの回答を信頼するとした割合は51.7%でした。一般人のSNS・動画サイト上のレビューは41.5%。一方、企業の公式サイト・アプリは58.7%で、AIを上回っています。飲食店に限った調査ではありませんが、AIを使う人の間で、AIの回答と公式情報の両方が信頼されていることが分かります。

ここで僕が注目するのは、お客様がお店や企業に連絡する前に、自分の希望を整理できることです。「何となく気になる」から「この条件なら合いそう」まで進んだ状態で、予約や相談に来る人もいるでしょう。企業側も、どんな目的や条件に応えられるのかを、先に説明しておく意味が大きくなります。

「おいしい店」だけでは、選ぶ理由が伝わらない

料理に込めたこだわりをメニューカードで伝える

レストランのサイトに「おいしい料理と、くつろぎの空間」と書かれていても、子ども連れの家族と、静かに記念日を過ごしたい二人では、知りたいことが違います。席の写真、料理の量、予算の目安、滞在時間、駐車場の有無。そうした具体的な情報が揃うと、自分たちに合うお店なのかを判断しやすくなります。

Googleも、自社のAI検索機能では従来のSEOの基本が引き続き有効で、表示のための特別な追加要件はないと説明しています。お客様に役立つ情報を、見つけやすく、読み取りやすく届けることが基本です。情報を整えれば必ず推薦されるわけではありませんが、何を提供できるかを正しく理解してもらうための土台になります。

これは、どの業種でも応用できる考え方です。「品質にこだわる」「丁寧に対応する」といった言葉に、具体的な内容を添えてみる。どんな人に向いているのか、費用には何が含まれるのか、利用前に何を確認すればよいのか。会社が伝えたい特徴と、お客様が知りたい条件をつなぐことで、説明が選択の助けになります。

その「こだわり」は、お客様にどんな良さがある?

ここから先で、僕が大切になると思うのが、会社やお店ならではのこだわりです。少し強い言い方をすれば「偏愛」。旬の食材を楽しんでもらいたい。家族で気兼ねなく過ごしてほしい。一人でも落ち着いて食事をしてほしい。例えばそんな思いがあるなら、メニュー、席の配置、接客にも、その考えが表れているはずです。

その良さを伝えるには、「なぜそうしているのか」と「お客様にどんな良いことがあるのか」をセットで説明すると分かりやすくなります。例えば、注文後に焼き上げる料理なら、熱々の状態を楽しめることと、提供までの時間を伝える。こだわりと利用条件の両方が分かれば、お客様は、その日の予定や目的に合うかを考えられます。

僕は、こうした説明に、その会社を信頼する理由が表れると思っています。「ゆっくり料理を楽しみたい方には、このコースがおすすめです」「お急ぎなら、こちらのメニューが向いています」。状況に応じて提案を変えられることには、現場で積み重ねた判断があります。その判断を言葉にしておくことが、AIを通じた案内にも役立つと考えています。

AIの「答え方」にも、会社の姿勢が表れる

タブレットで情報を整理しながら人と希望を相談する

自社でAIによる接客を提供するなら、何を聞き、どう答えるかまで考えておきたいところです。家族向けのレストランであれば、人数に加えて、子ども用の椅子が必要かを確かめる。記念日の相談なら、希望する雰囲気や時間を聞く。相手が大切にしていることを踏まえて案内できるかが、接客の質に関わります。

会話の接点は、自社サイトの中だけとも限りません。Googleは2026年5月、広告の中で企業サイトの情報をもとに質問へ答える「Business Agent for Leads」を発表しました。日本での提供状況は今回確認できていませんが、AIとの対話を企業との接点につなぐ仕組みが開発されています。

ここでは、お客様が使う外部のAIと、自社が提供する接客AIを分けて考える必要があります。外部のAIの答え方を、企業が自由に決められるわけではありません。公式情報を正確に保つことと、自社のAIに案内の基準を持たせること。それぞれの役割を整理し、確認できないことは人へつなぐ方針まで決めておくと、情報と実際の対応の食い違いを減らしやすくなります。

2〜3年後、「探す」と「予約する」の間が変わる

2028〜2029年には、お客様がAIで希望を整理し、お店や企業の情報と照らし合わせ、予約や相談へ進む流れが、今より身近になると予想しています。例えば、家族での食事について条件を伝えると、候補と選んだ理由、予約可能な日時が示され、本人が内容を確認して予約する。条件整理から手続きまでを、続けて進められる体験です。

ただし、任せたい範囲は場面によって違うでしょう。いつものテイクアウトの再注文と、大切な記念日の食事では、確かめたいことが違います。後者では、席の雰囲気や当日の対応を、お店の人に直接相談したいこともあるはずです。AIが準備を手伝い、人との対話では細かな希望を確かめる、という組み合わせが広がると考えています。

そのために企業が準備できるのは、提供内容や条件を正確に伝え、次の行動へつなげることです。特に空席や受付時間のように変わる情報は、更新方法が大切になります。会話の中では予約できると言われたのに、実際には受け付けられない。そんな行き違いを防げるかも、AIを活用する際の大切な課題です。

その強み、社長や現場の人だけが知っていませんか?

まず取り組みやすいのは、お客様からよく聞かれる質問を10〜20個ほど集めることです。レストランなら「子ども連れでも利用できますか」「何人まで一緒に座れますか」「コースはどのくらい時間がかかりますか」。こうした質問は、お客様が予約を決める前に確かめたいことを教えてくれます。

集めた質問は、「今の答え」「そう答える理由」「確認が必要な条件」まで整理してみます。「子ども連れでも利用できますか」なら、子ども用の椅子の数、ベビーカーを置ける場所、利用できる席の条件まで確認する。普段は担当者がその場で補っている説明を、他の人にも分かる形にする作業です。ここに、そのお店ならではの配慮が見つかることもあります。

整理した内容は、お客様が必要とする場所に載せます。席の情報は席の写真の近くに、コースの所要時間はメニューの近くに、予約条件は申し込みの前に。あわせて、変更時に誰が更新するかを決めておけば、情報を保ちやすくなります。こうした準備は、公式サイト、スタッフの案内、AIの回答に共通する基礎になります。

まずは、自社サイトで「お客様が迷う場所」を探してみる

お客様が判断しやすいようにWebページの情報を整える

次に、初めてのお客様になったつもりで、自社サイトをスマートフォンでたどってみてください。SNSの写真で興味を持った人が、予算や利用条件を確かめ、予約や問い合わせに進めるでしょうか。必要な情報が見つからない、SNSと営業時間が違う、予約画面で初めて追加条件を知る。そうした小さなつまずきが、見直す場所を教えてくれます。

改善は、一つから始められます。例えば、予約前によく電話で聞かれる条件を、その情報が必要なページに追記する。その後、同じ確認の電話や来店時の行き違いがどう変わったかを見てみる。単純に問い合わせが減ればよいという話ではなく、お客様が安心して判断できたか、必要な相談がしやすくなったかを確かめることが大切です。

僕は、AI時代のWebを考えるときも、この視点を持ち続けたいと思っています。会社の中では当たり前の知識を、お客様が選ぶための判断材料に変える。その積み重ねが、AIを使って探す人にも、直接サイトを訪れる人にも役立ちます。まずは「いつも口頭で補っている説明」を一つ、サイトに書いてみる。そこから始められる準備があります。

出典

博報堂「AIショッパー調査」

Google Search Central

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